涙色の死神と巫女と妖怪と
驚いたのは、沙月、葉月、妖怪たちだけではなく、悪霊の親玉もまた驚いていた。誰も気付いてはいないが。

「……それで、急にどうしたの?」

瑠依の問いかけに、静瑠は「多分、あの悪霊は俺らが想像しているよりも遥かに強いぞ。尋常じゃないほどの圧だ。紫乃、少し手伝え」と紫乃の方を向いた。

「え?うん……分かった」

紫乃が頷くと、静瑠は「それから」と沙月たちの方を見る。

「……そうだな。沙月と春太郎、幸子にも手伝ってもらおうか……瑠依!時間を稼げ!」

「分かった」

瑠依は頷くと、先手必勝、と言わんばかりに悪霊に向かって走り出した。葉月や妖怪たちも加勢する。

紫乃の手に持っていた本を借り、パラパラとページをめくっている静瑠に近づいた沙月は「……えっと、君は?」と話しかけた。

「沙月、この人怖いです……」

春太郎と幸子は声を揃え、沙月にピタリとくっつく。

(見た目は怖くはないけど、急に現れて知らないはずの私たちの名前を呼んだからね……怖くなるよね。私も、少し怖かった……)

沙月が静瑠を見つめていると、静瑠は不意に顔を上げて沙月と目を合した。静瑠と目が合った沙月は、体を震わせる。

「……俺は静瑠。瑠依のもう1つの人格だ……瑠依が見たり聞いたりしたことは、俺も見えたり聞こえたりしている。俺が目覚めている間だけはな。だから、お前のことは知っている」
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