転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました 番外編
(ディ、ディー……!!)
それは、若かりし日のディーだった。大陸歴2002年ということは、今の彼は十八歳……もうすぐ十九歳だろうか。
(うわ、若い頃のディーってレヴそっくり!)
レヴはディーの血と魔力から生まれたので似ているのは当然だ。しかしほぼ同い年ともなると顔立ちは見分けがつかないほど似ている。強いていえば育った環境のせいか顔つきがやや違った。ディーの方が凛とした雰囲気で厳しく、レヴの方が偉そうで人懐っこい。
サマラは怪しまれないように、ディーからレヴの顔が見えないようさりげなく視界を遮る。しかしディーはサマラたちのことなどまるで気にすることなく、足早に歩いていってしまった。すると。
「ディー様!」
研究所からひとりの女性が飛び出してきてサマラたちの横を通り過ぎ、ディーに追いついた。
初めて見る顔の女性だったが、サマラは直感した。きっとこれが血の繋がりというものだろう。
(……ナーニア……お母様……?)
ブラウンの髪色もおっとりした顔立ちもサマラには似ていない。けれど走るたびに揺れる癖っ毛が、サマラと瓜二つだった。
「巨大竜退治に志願したと聞きました、本当ですか?」
「ああ。あの竜は並の魔法使いでは歯が立たない。俺がやるしかないだろう」
「けど、危険です。あなたにもしものことがあったら、私……」
「俺がやらねば竜はいつかこの国も滅ぼしにくる。……この国には守りたい人がいる。戦わなければ守れない」
サマラは鼓動を逸らせながら、レヴの背を押しさりげなく木の陰へと身を潜める。こんな大事な会話はギャラリーが見ていてはいけない。
しかし不器用極まりないディーはそれだけ言うと口を噤み、ナーニアに背を向けて去っていってしまった。ナーニアも彼を止められないと思ったのか追いかけることはせず、ただ不安そうな眼差しで見つめていた。
「……あれがお前の母親か」
レヴが小声で言う。サマラが「わかるの?」と問い返せば「魔力の感じが半分同じ」とレヴは淡々と答えた。人間になっても彼には魔力の質が感じられるようだ。
ナーニアが研究所のほうへ戻っていったのを見て、低木の植え込みに身を潜めていたサマラは立ち上がる。
(そっか。2002年ってことは、巨大竜出現と討伐の年か。確か討伐出発の前にディーはナーニアにプロポーズするんだよね)
ファンブックで読んだ歴史を目撃しているようで、前世のゲーマーの血が騒ぐ。しかし娘としてはやはり複雑な気持ちが拭えない。
ナーニアが研究所の扉を開こうとしたとき、同じタイミングで人が飛び出してきた。驚いたナーニアは目を丸くしたあと、その人物と笑い合う。
「ああ、驚いたわ。セクト!」
「俺もだよ。ちょうどきみを捜しにいくところだったんだ」
サマラはつくづくと血縁の不思議さを思い知る。これも直感だ。鼻に黄金色のそばかすを散らした無邪気な笑顔を浮かべる男は、緑色の瞳と赤い髪を持っていた。
(……この人が私の……本当の父親……)
それは、若かりし日のディーだった。大陸歴2002年ということは、今の彼は十八歳……もうすぐ十九歳だろうか。
(うわ、若い頃のディーってレヴそっくり!)
レヴはディーの血と魔力から生まれたので似ているのは当然だ。しかしほぼ同い年ともなると顔立ちは見分けがつかないほど似ている。強いていえば育った環境のせいか顔つきがやや違った。ディーの方が凛とした雰囲気で厳しく、レヴの方が偉そうで人懐っこい。
サマラは怪しまれないように、ディーからレヴの顔が見えないようさりげなく視界を遮る。しかしディーはサマラたちのことなどまるで気にすることなく、足早に歩いていってしまった。すると。
「ディー様!」
研究所からひとりの女性が飛び出してきてサマラたちの横を通り過ぎ、ディーに追いついた。
初めて見る顔の女性だったが、サマラは直感した。きっとこれが血の繋がりというものだろう。
(……ナーニア……お母様……?)
ブラウンの髪色もおっとりした顔立ちもサマラには似ていない。けれど走るたびに揺れる癖っ毛が、サマラと瓜二つだった。
「巨大竜退治に志願したと聞きました、本当ですか?」
「ああ。あの竜は並の魔法使いでは歯が立たない。俺がやるしかないだろう」
「けど、危険です。あなたにもしものことがあったら、私……」
「俺がやらねば竜はいつかこの国も滅ぼしにくる。……この国には守りたい人がいる。戦わなければ守れない」
サマラは鼓動を逸らせながら、レヴの背を押しさりげなく木の陰へと身を潜める。こんな大事な会話はギャラリーが見ていてはいけない。
しかし不器用極まりないディーはそれだけ言うと口を噤み、ナーニアに背を向けて去っていってしまった。ナーニアも彼を止められないと思ったのか追いかけることはせず、ただ不安そうな眼差しで見つめていた。
「……あれがお前の母親か」
レヴが小声で言う。サマラが「わかるの?」と問い返せば「魔力の感じが半分同じ」とレヴは淡々と答えた。人間になっても彼には魔力の質が感じられるようだ。
ナーニアが研究所のほうへ戻っていったのを見て、低木の植え込みに身を潜めていたサマラは立ち上がる。
(そっか。2002年ってことは、巨大竜出現と討伐の年か。確か討伐出発の前にディーはナーニアにプロポーズするんだよね)
ファンブックで読んだ歴史を目撃しているようで、前世のゲーマーの血が騒ぐ。しかし娘としてはやはり複雑な気持ちが拭えない。
ナーニアが研究所の扉を開こうとしたとき、同じタイミングで人が飛び出してきた。驚いたナーニアは目を丸くしたあと、その人物と笑い合う。
「ああ、驚いたわ。セクト!」
「俺もだよ。ちょうどきみを捜しにいくところだったんだ」
サマラはつくづくと血縁の不思議さを思い知る。これも直感だ。鼻に黄金色のそばかすを散らした無邪気な笑顔を浮かべる男は、緑色の瞳と赤い髪を持っていた。
(……この人が私の……本当の父親……)