天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
なぜこんなことを言われなければならない。人の命は皆、平等だというのに……。
おばあちゃまは、こんなゴミのような人たちのせいで死んだんだ……!
「だが、それと優弦に対する評価は別だ。優弦、お前は来月から……」
「百合絵さん、もう十分だ。ありがとう」
凛と透き通った声が、部屋中に響いた。
優弦さんはなぜか廊下にいる百合絵さんに向かって、御礼を伝えている。
誰もが状況を把握できないまま、茫然と二人の様子を伺っていると、百合絵さんがすっと着物の袂からビデオカメラを取り出した。
そしてそれを、優弦さんに手渡すと、再び入り口付近に戻って待機する百合絵さん。
「何の真似だ……それは……」
怒りで眉間をピクピク動かしている旦那様に詰め寄られ、優弦さんはうっすら目を細めた。
「取り返しのつかない発言を沢山残してくださり、感謝いたします。俺が副院長の座に着くとが発表されるこの日なら、醜い差別発言が十分残るだろうと思い準備していました」
「は……?」
「撮れ高は十分です。これを記者に流し、内部告発させて頂きます」
シン……と室内が水を打ったようになった。
証拠、差別発言、内部告発……?
予想だにしていなかった展開に、頭の中が真っ白になっていく。
――これから俺がすることを、ただ見守ってくれるかな。
優弦さんに色んな質問をしたかったけれど、彼の言葉を思い出し、私はぐっと言葉を押し込んだ。
優弦さんは、今日という日をずっとずっと待っていたの……?
すべては、相良家を陥れるために――。
「百合絵ぇぇえ‼」
暫く黙っていた旦那様の怒号が、雷のように部屋中に響き渡った。
般若のように恐ろしい顔で、入口にいる百合絵さんのことを睨みつけている。
私は何も考えずに彼女のそばに寄って、庇うように肩を抱いた。ほとんど、反射的な行動だった。
百合絵さんは、ぶるぶると体を震わせていたけれど、でもその視線にはしっかりと意思が感じられた。
「百合絵さん、どうして……」
小声で問いかけると、彼女は声を震わせながらもしっかりと旦那様を見据えている。
「と、当然のことです……。もう一度、世莉様に信用してもらうためなら……」
もしかして、体を張って私の味方をしてくれたというの……?
相良家の真実を暴き、向き合い、私の信用を取り戻すために……。
おばあちゃまは、こんなゴミのような人たちのせいで死んだんだ……!
「だが、それと優弦に対する評価は別だ。優弦、お前は来月から……」
「百合絵さん、もう十分だ。ありがとう」
凛と透き通った声が、部屋中に響いた。
優弦さんはなぜか廊下にいる百合絵さんに向かって、御礼を伝えている。
誰もが状況を把握できないまま、茫然と二人の様子を伺っていると、百合絵さんがすっと着物の袂からビデオカメラを取り出した。
そしてそれを、優弦さんに手渡すと、再び入り口付近に戻って待機する百合絵さん。
「何の真似だ……それは……」
怒りで眉間をピクピク動かしている旦那様に詰め寄られ、優弦さんはうっすら目を細めた。
「取り返しのつかない発言を沢山残してくださり、感謝いたします。俺が副院長の座に着くとが発表されるこの日なら、醜い差別発言が十分残るだろうと思い準備していました」
「は……?」
「撮れ高は十分です。これを記者に流し、内部告発させて頂きます」
シン……と室内が水を打ったようになった。
証拠、差別発言、内部告発……?
予想だにしていなかった展開に、頭の中が真っ白になっていく。
――これから俺がすることを、ただ見守ってくれるかな。
優弦さんに色んな質問をしたかったけれど、彼の言葉を思い出し、私はぐっと言葉を押し込んだ。
優弦さんは、今日という日をずっとずっと待っていたの……?
すべては、相良家を陥れるために――。
「百合絵ぇぇえ‼」
暫く黙っていた旦那様の怒号が、雷のように部屋中に響き渡った。
般若のように恐ろしい顔で、入口にいる百合絵さんのことを睨みつけている。
私は何も考えずに彼女のそばに寄って、庇うように肩を抱いた。ほとんど、反射的な行動だった。
百合絵さんは、ぶるぶると体を震わせていたけれど、でもその視線にはしっかりと意思が感じられた。
「百合絵さん、どうして……」
小声で問いかけると、彼女は声を震わせながらもしっかりと旦那様を見据えている。
「と、当然のことです……。もう一度、世莉様に信用してもらうためなら……」
もしかして、体を張って私の味方をしてくれたというの……?
相良家の真実を暴き、向き合い、私の信用を取り戻すために……。