天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
心の距離が縮まるとき
▼心の距離が縮まるとき
大河ドラマで女優さんが着る着物を仕立てられるなんて――初めての経験だ。
優弦さんからその話を頂いたとき、私の頭の中にあった〝復讐〟の文字は一瞬だけ吹っ飛んでしまった。
ドラマ関連の仕事は、雪島梅の名前で仕事を受けていたため、私の力ではまだまだ及ばないところがある。
それがまさか、こんなにすぐ転がり込んでくるなんて夢にも思わなかった。
だから、優弦さんにお願いする屈辱より先に、この仕事を受けたいという気持ちが勝ってしまった。
そこから先は、あれよあれよという間に話が進み、担当者を紹介され、衣装係と綿密な打ち合わせが始まった。
デザインも決まり、いよいよ裁縫に取り掛かるまで、わずか三週間の出来事だった。
この着物を着てくださる女優さんをイメージしながら、私はひと針ひと針本気で思いを込めて縫った。
任されたからには、本気でやり抜く――。
そんな気持ちで、一着一着にしっかり時間をかけて完成させた。
正直、寝る間も惜しんで作業をしていたせいで、ばあやにもすごく心配をかけてしまった。
だけど、私はずっとドキドキワクワクしていた。まるで、楽しいイベントごとを待つ子供のように。
そうして、何とか納期までに着物を完成させ、無事に納品が完了した今日。
私は今、お行儀が悪いけれど、自分の部屋でひとりで大の字になっている。
「終わった……」
これが、燃え尽き症候群というやつだろうか。
体が動かないし、もう何も考えることができない。
ここ数日はTシャツにパンツ姿というラフな格好で屋敷内をうろついていたけれど、女中もばあやも何も言わないでいてくれた。
たまにすれ違う相良家の親族には、陰でこそこそ何か言われていた気もするけれど、そんなことは関係ない。
とにかく私はやり切ったのだ。
あとは、女優さんが綺麗に着こなしてくれるのを、テレビ越しに見守るだけ……。
「おばあちゃま、私頑張ったよ……」
目を閉じながら、そうつぶやいて、私はそのまま深い眠りへと落ちていった。
それから数週間経って、いよいよドラマが放送される日になった。
放送時間は朝の八時だったけれど、仕事の打合せがあったためリアルタイムでの視聴はできなかった。
大河ドラマで女優さんが着る着物を仕立てられるなんて――初めての経験だ。
優弦さんからその話を頂いたとき、私の頭の中にあった〝復讐〟の文字は一瞬だけ吹っ飛んでしまった。
ドラマ関連の仕事は、雪島梅の名前で仕事を受けていたため、私の力ではまだまだ及ばないところがある。
それがまさか、こんなにすぐ転がり込んでくるなんて夢にも思わなかった。
だから、優弦さんにお願いする屈辱より先に、この仕事を受けたいという気持ちが勝ってしまった。
そこから先は、あれよあれよという間に話が進み、担当者を紹介され、衣装係と綿密な打ち合わせが始まった。
デザインも決まり、いよいよ裁縫に取り掛かるまで、わずか三週間の出来事だった。
この着物を着てくださる女優さんをイメージしながら、私はひと針ひと針本気で思いを込めて縫った。
任されたからには、本気でやり抜く――。
そんな気持ちで、一着一着にしっかり時間をかけて完成させた。
正直、寝る間も惜しんで作業をしていたせいで、ばあやにもすごく心配をかけてしまった。
だけど、私はずっとドキドキワクワクしていた。まるで、楽しいイベントごとを待つ子供のように。
そうして、何とか納期までに着物を完成させ、無事に納品が完了した今日。
私は今、お行儀が悪いけれど、自分の部屋でひとりで大の字になっている。
「終わった……」
これが、燃え尽き症候群というやつだろうか。
体が動かないし、もう何も考えることができない。
ここ数日はTシャツにパンツ姿というラフな格好で屋敷内をうろついていたけれど、女中もばあやも何も言わないでいてくれた。
たまにすれ違う相良家の親族には、陰でこそこそ何か言われていた気もするけれど、そんなことは関係ない。
とにかく私はやり切ったのだ。
あとは、女優さんが綺麗に着こなしてくれるのを、テレビ越しに見守るだけ……。
「おばあちゃま、私頑張ったよ……」
目を閉じながら、そうつぶやいて、私はそのまま深い眠りへと落ちていった。
それから数週間経って、いよいよドラマが放送される日になった。
放送時間は朝の八時だったけれど、仕事の打合せがあったためリアルタイムでの視聴はできなかった。