天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
テレビを買って録画の準備をしようと思っていたところ、井之頭さんづてに私の部屋にテレビがないことを知った優弦さんが、居間のテレビは普段誰も使っていないから、そこで録画すればいいと言ってくれた。
その言葉に甘えて私は昨夜録画の手配を済ませ、今、夜の二十二時になってそっとテレビのある居間へと向かっている。
思ったよりも仕事が終わるのが遅くなってしまった。
朝の早い優弦さんを起こさないようにしなければと気をつけながら向かったけれど、何故か居間の灯りがついていた。
もしかして、誰かいる……?
そーっと障子の隙間から中を覗くと、そこにはソファに座って真剣な顔でテレビを見ている優弦さんがいた。
「え……?」
思わず小さな声をあげると、優弦さんはすぐ私に気づき、珍しく焦った様子を見せた。
もしかしてだけど、今彼が観ているのは、私が衣装作成に協力したドラマ……?
静かに障子を開けると、優弦さんは映像を一時停止して、「すまない。もう既に観終えて寝ているかと思った」と謝ってきた。
もしかして、私の仕事に関心を持ってくれているの……?
まさか、そんなことは……。
動揺しながらも、私は「いえ」とだけ短く返した。
優弦さん革張りの黒いソファの隣の席をポンと叩いて、「おいで、一緒に見よう」と誘ってきた。
どうすべきか戸惑いながらも、ここで断るのもおかしいと思い、おずおずと横に座る。
もう紺色の浴衣の寝間着に着替えている優弦さんは、前髪もおろしていて、いつもより少し幼く見える。
完全にオフ状態の彼とこんな風にテレビを観るなんて……、まるで夫婦みたいだ。
優弦さんは映像を最初から巻き戻してくれて、さらに映像が見やすいように部屋のライトをしぼって暖色系のライトにしてくれた。
「始めるよ」
彼の低い言葉にこくんと頷く。私は既に逸る気持ちを抑えられないでいる。
子供のように画面に釘付けになって、両膝の上で拳を握った。
主人公の姫役を演じる女優・小田島(おだじま)さくらの足元が映ると、私は息を止めていた。
物語の時代は平安中期。私は、光栄なことに成人女性の正装と言われている“十二単”の制作を任せてもらえた。
宮中での儀式に備えた姫が十二単を身に纏い、颯爽と現れるこのシーンのためだけに、全ての技術を注ぎ込んだ。
その言葉に甘えて私は昨夜録画の手配を済ませ、今、夜の二十二時になってそっとテレビのある居間へと向かっている。
思ったよりも仕事が終わるのが遅くなってしまった。
朝の早い優弦さんを起こさないようにしなければと気をつけながら向かったけれど、何故か居間の灯りがついていた。
もしかして、誰かいる……?
そーっと障子の隙間から中を覗くと、そこにはソファに座って真剣な顔でテレビを見ている優弦さんがいた。
「え……?」
思わず小さな声をあげると、優弦さんはすぐ私に気づき、珍しく焦った様子を見せた。
もしかしてだけど、今彼が観ているのは、私が衣装作成に協力したドラマ……?
静かに障子を開けると、優弦さんは映像を一時停止して、「すまない。もう既に観終えて寝ているかと思った」と謝ってきた。
もしかして、私の仕事に関心を持ってくれているの……?
まさか、そんなことは……。
動揺しながらも、私は「いえ」とだけ短く返した。
優弦さん革張りの黒いソファの隣の席をポンと叩いて、「おいで、一緒に見よう」と誘ってきた。
どうすべきか戸惑いながらも、ここで断るのもおかしいと思い、おずおずと横に座る。
もう紺色の浴衣の寝間着に着替えている優弦さんは、前髪もおろしていて、いつもより少し幼く見える。
完全にオフ状態の彼とこんな風にテレビを観るなんて……、まるで夫婦みたいだ。
優弦さんは映像を最初から巻き戻してくれて、さらに映像が見やすいように部屋のライトをしぼって暖色系のライトにしてくれた。
「始めるよ」
彼の低い言葉にこくんと頷く。私は既に逸る気持ちを抑えられないでいる。
子供のように画面に釘付けになって、両膝の上で拳を握った。
主人公の姫役を演じる女優・小田島(おだじま)さくらの足元が映ると、私は息を止めていた。
物語の時代は平安中期。私は、光栄なことに成人女性の正装と言われている“十二単”の制作を任せてもらえた。
宮中での儀式に備えた姫が十二単を身に纏い、颯爽と現れるこのシーンのためだけに、全ての技術を注ぎ込んだ。