不妊の未来

第一章


○忘年会会場(夜)

地上200メートル。

都内の夜景を見ながら、ヨーロッパの優雅な雰囲気漂うロイヤルスタイルのバンケットホールに青梅レディースクリニックのスタッフが集まり、忘年会が開かれている。

ビール片手にバタバタと動き回っている、入社早々幹事を任された後輩の様子を横目で見ながら同僚たちと会話を楽しむ茉由。


同僚「今年のくじ引きの景品はなんだろうね」

毎年豪華な景品が出る忘年会恒例のくじ。


同僚「ねぇ、一等がなにか教えてよ」


幹事を捕まえて聞くも幹事は意味深な笑みを浮かべるだけで口を割らない。


同僚「温泉旅館だといいわよねぇ。日々の疲れた体を癒したい」

同僚「温泉、いいわね。でもこのクリニックが関係してるとなると子宝の湯になっちゃうのよね」


青梅レディースクリニックは不妊治療を専門とする婦人科系クリニック。

だから毎年温泉旅館は『子宝の湯』なのだけど、結婚して子供のいるスタッフには関係ないことのようで、矛先が既婚、子なしの茉由に向く。


同僚「当たったらあげるわね」

茉由「そんな」


茉由は首を横に振り遠慮する。


同僚「どうして?結婚してもう長いわよね?もしかして子供欲しくないタイプなの?」


この問いに茉由は曖昧な表情を浮かべる。


同僚「鷲尾さん、仕事熱心だもの。子供より仕事のタイプよね?土日の勤務優先的に入ってくれるの、すごく助かっているのよ」

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