不妊の未来
○回想(大和実家)正月昼
クリニックから車で10分の距離にある純日本家屋の住居。
20畳ほどの畳の部屋に親戚が所狭しと集まり、おせち料理とお酒に舌鼓を打つ。
親戚「大和はまだ結婚しないのか」
親戚が集まり、酔いが回ってくると必ずと言っていいほどなされる会話。
毎年のことながら大和はうんざり。
聞こえないふりをすると父親の方へと矛先が向く。
大和の父親は大和と同じ不妊治療専門の医師で、青梅クリニックの院長の親友。
叔父「跡継ぎを早く産んでもらわないと兄さんも困るよな」
父の従兄弟の意味ありげの視線に父は目を伏せ、控えめに微笑む。
困ったような顔をしたのは料理を運んでいる大和の母親だ。
というのも大和母親は再婚相手。
しかも前妻は不妊のため離婚させられた(父親が不妊治療の第一人者だからその体裁のために)というのだから居た堪れない。
叔父「結婚したくないわけじゃないんだろ?」
大和は笑顔でやり過ごす。
なぜなら想い人は既婚者で結婚出来ない相手だから。
回想終わり