不妊の未来
○料亭(続き)
茉由「そのお話を聞けてよかったです」
茉由が気になったのは『前妻は不妊のため離婚させられた(父親が不妊治療の第一人者だからその体裁のために)』という部分。
大和もあえて隠さず伝えた。
大和「今時、と笑われるでしょうが、僕と結婚するということは子供が必須条件なんです」
茉由は頷き、話を切り出す。
茉由「もうご存知かと思いますが、治療のため、退職します」
大和は目を伏せる。
それからゆっくりと目を開き、茉由を見つめる。
大和「なぜ仕事まで辞めるのですか?ツラいですか。妊娠していく人を見るのは」
茉由は首を横に振り、笑顔を見せる。
なにかを諦め、ふっきれた茉由の笑顔。
それを見て大和は顔を歪ませた。
大和「僕があなたを支えます。そう言えたらいいのに」
悔しそうな大和の声に茉由は胸打たれる。
でも必死に感情を消すようにしていた。
大和「ご主人は支えてくれそうですか?」
大和の呟きに茉由は首を小さく左右に振った。
大和「では離婚を?」
茉由「はい」
大和「それなら僕と」
大和はそこまで言って言葉を止めた。
たとえ茉由と結婚出来たとしても、親戚から妊娠を切望される。
妊娠しにくい体になる茉由に苦労させることは火を見るより明らかだ。
理玖との結婚生活の中で妊娠することに思い悩んだ茉由に同じかそれ以上の苦しみは味わわせたくなかった。
大和「それなら」
大和は真剣な眼差しを茉由に向け、別の考えを口にする。