不妊の未来
○培養室
杏菜「私でよければ話聞きますよ?」
深刻な顔をしている杏菜に茉由は努めて笑顔で答える。
茉由「ありがとう。でも大丈夫。そこまで深刻な悩みじゃないから…って、それより杏菜ちゃん、なんか今日雰囲気違うね。メイク変えた?」
茉由は改めて杏菜の顔をマジマジと見る。
元々色白で綺麗な肌をしている杏菜は普段あまりメイクをしない。
でも今日はマスクで隠されていない目だけでもしっかりとメイクが施されているのがよくわかる。
杏菜「私、本気で狙おうかと思って」
キラリと光る目には自信というか決意が現れて見える。
でもなんのことか茉由には分からない。
茉由「なにを狙うの?」
杏菜「大和先生のこと」
杏菜は昨日の忘年会で大和に恋人がいないと知り、彼女、ひいては婚約者になろうと決めたのだと言う。
茉由「大和先生のことが好きなの?」
女性が多い職場だからこそ、恋話はよく聞くが杏菜からその手の話を聞いたことのない茉由は驚き、聞いてみた。
杏菜「もちろん」
杏菜は大きく頷き、それから首を傾げた。
杏菜「ていうか、このクリニック内に独身で大和先生のこと好きじゃない人っていますか?」