不妊の未来
私服は私服でステキだったけど、大和は手術着が似合うと茉由は思う。

でも見とれている場合ではないとまずは挨拶を口にすることにした。

茉由「おはようございます」

茉由に続いて杏菜が元気よく挨拶する。

杏菜「おはようございます!」

大和「おはようございます」

茉由「今日から1週間。採卵、胚移植ともに三崎が担当します」

杏菜は三ヶ月前まで他院で働いていたので、知識や経験はしっかりある。

ただ当院でのやり方に慣れるまで処置室での担当は外れていた。

室長「そろそろ任せよう」

室長の言葉を受け、培養室での意向を大和に伝えたというわけだ。

茉由の業務報告を受け、大和が隣に立つ杏菜の方を見ると、杏菜が一歩前に出た。


杏菜「精一杯頑張りますので、よろしくお願いします!」


大和が杏菜をジッと見つめる。

杏菜の耳はそれだけで紅潮し、恥ずかしさから顔を下げた。
初々しい反応を茉由は微笑ましく思う。

目を細めて微笑み、杏菜を見つめる茉由。
その茉由を見つめる大和。


看護師「先生?」


黙ったままの大和に看護師が声を掛けた。

ハッと我に返った大和がいつも通りの淡々とした口調で口火を切る。

大和「皆さん、本日もよろしくお願いします。では早速はじめましょうか。患者を」

大和の合図で患者が呼び込まれ、順次採卵が始まった。

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