不妊の未来

大和「鷲尾さん」


採卵を全て終え、電子カルテの入力を終えた大和は茉由に声をかけた。

呼ばれて片付けの手を止め振り返る茉由。


茉由「はい」

大和「明日の胚移植は鷲尾さんが担当してください」


大和の言葉を聞いたスタッフの目が一斉に杏菜に向く。

杏菜は不安そうに顔を歪めている。

杏菜の手技に問題はなかったのに。

大和を意識している感じはあっても、むしろ大和の指示に素早く対応できていたからよかったと茉由は思う。

それなのになぜ。


大和「ではお願いしますね」

茉由「あ、ちょっと待ってください!」


茉由は居ても立っても居られず、処置室から出て行った大和を追い、聞き返した。


茉由「あのっ!」

白衣を手にしていた大和が振り返る。

茉由「明日の移植も三崎が、それと室長がフォローで担当になっています」

大和「それは患者リストを確認した上での判断ですか?」

言われて茉由の表情は固くなった。

明日の胚移植の患者リストの中には胚移植反復不成功、着床不全の患者がいたのだ。

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