不妊の未来

茉由の職業は胚培養士。

体外で精子と卵子を受精させ、出来た胚の凍結や胚の融解、培養などを行う仕事は患者個々のタイミングに合わせるため、土日祝日が関係ない。


同僚「土日勤務オーケーなんて、ご主人、理解ある方よね」

茉由「そうですね」

茉由の旦那、鷲尾理玖は茉由の8歳上。
一流の商社マンで高収入。

共働きしなくても良いのだが、理玖は茉由が望むなら仕事を続けて構わない、仕事を頑張る茉由が好きだから家事は協力するし応援する、とも言ってくれている。

ただ本音を言えば茉由は子供が欲しい。

子供が出来たら辞めるつもりでいると結婚報告の時に上司に合わせて話してもいた。

でも結婚して5年。

待てど暮らせど妊娠はしない。

報告していた上司も昨年早期退職してしまったため、今の上司含め、同僚たちは揃って茉由が子供を望んでいないと思っている。


同僚「今時は結婚=子供って発想にはならないものね。仕事一筋。いいと思うわー。子供なんていたって……」


同僚たちの話の矛先は子育ての愚痴に変わった。

ホッと胸を撫で下ろす茉由。

不妊治療の専門病院で働いていながら子供を授かれないことを指摘され、胚培養士としてのプライドを貶された挙げ句「検査受けてみたら?」なんて言われたらどうしようかと内心ハラハラしていたのだ。

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