不妊の未来
第四章
○処置室(翌日午後)
患者が移植の準備、説明を受けている間に茉由は培養室で念入りに準備を整える。
胸のうちのモヤモヤを無くし、気持ちを切り替えるように集中して。
だから外来を早く終えた大和が入って来たことにも気づかなかった。
独り言を呟き、手順を確認しながら室内を動き回る茉由。
茉由「カテーテルで受精卵を吸って、大和先生に手渡す」
大和「はい」
茉由「?!」
突然大和の声が聞こえて驚く茉由。
声のした入り口の方を向くと大和が笑顔で茉由の方を見ていた。
茉由「い、いつからそこに?!」
大和「いつからでしょう?」
首を傾げる大和に茉由は言う。
茉由「声をかけてくだされば、一緒にタイミングの確認が出来たのに」
大和「今からでも遅くないのでは?」
大和の声掛けに茉由は「それもそうだ」と頷き、手順の確認を始める。