不妊の未来
○外来(午前)
待合室には座りきれないほどの患者が待っている。
次の患者を呼び込む直前に合わせて茉由は大和に声をかけるべく外来の脇で待機している。
大和「現在卵胞の発育は順調ですね。体調に変わりはないですか?」
大和の診察に耳を傾ける茉由。
患者「体調は大丈夫です。ただはじめての体外受精なので分からないことが多くて不安で」
大和「不安なことがあれば紙に書き出して受付に預けてください。次回の診察までに回答しておきますから」
大和は診察室でやり取りすることは避けた。
待合室には大和の診察を待つ患者で溢れている。
ただ目の前の患者を蔑ろにしたかというとそうでもない。
短時間で効率的かつ患者に不安を残させない大和のやり方に賛否両論あるものの、茉由は聞いていて好感がもてた。
ただ患者の質問まで受け付けるとなると休む時間はほとんどない。
大和は月曜日から土曜日までの通常の外来業務では一日に100人近いの患者さんを診て、検査をし、処置を施し、それに加えて学会発表の準備、分院への出張、患者さんに向けた治療の説明会などを行う。