不妊の未来

第五章


○茉由自宅

鼻歌混じりに料理を作る茉由。
そこへ理玖が帰宅。

理玖「ただいま。うーん、今日もいい匂い」

茉由「おかえりなさい。すぐ用意するね」

理玖は茉由の機嫌がいいことに声色で気がついた。

理玖「なにかいいことあった?」

茉由は体外受精10回目にして初めて着床した患者の話を興奮気味に話した。

理玖は食事をとりながら茉由に相槌を打つ。

理玖「すごいな。奇跡的な話だ」

茉由「ほんと、奇跡みたい。でも患者さんと大和先生が諦めなかったからこその結果なんだよね」

理玖「大和先生って前に茉由が褒めてた医師?」

茉由「うん…あ、もしかしてまたやきもち焼いてくれた?」

理玖「ハハ。そんな何度も妬かないよ。でもほんとによかったな」

理玖は他人事にも関わらず、心からの笑顔を見せた。
そんな理玖が茉由は改めて好きだと思う。

理玖「そうだ」


理玖は食事を中断。

鞄から封筒を取り出した。


理玖「これ貰ったんだ」


理玖から手渡され、茉由は封筒の中身を確認する。

中身は某有名テーマパークのチケットだ。

茉由がチケットから理玖の方に顔を向ける。


理玖「後輩の結婚祝いにみんなで渡したんだけど授かり婚だったらしくて、奥さんのつわりがひどくて行けないんだって。だから」

茉由「そうなんだ」

茉由はチケットを見下ろして言う。


茉由「残念だけど赤ちゃんのためだもんね」

理玖「まぁ、そうだな。でも夫婦揃ってテーマパーク好きだからこのチケットを俺に渡す時、なかなか手放さなくてさ」


理玖はその時の様子を思い出して笑った。


理玖「だからそこ行って子供用の土産買って来てやろうと思うんだ。茉由の休みに合わせるから一緒に行こう」

茉由「あ、うん。わかった。予定確認してみるね」


茉由は友達でも知り合いでもない他人の子供用品を買うことに少し抵抗を感じていた。

でも理玖との久しぶりの外出に嫌な顔はしたくない。

すぐにシフト表を確認して3週間後に出掛ける予定を組んだ。


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