不妊の未来
理玖「落ち着きないな」
苦笑いの理玖。
茉由「子供は待てないよね」
理玖「たしかにな。でもあんなに好き勝手動いていて迷子にでもなったらどうするんだろうな」
茉由「親はちゃんと見てるでしょ」
茉由が男の子の走って行った方を見て親を確認する。
男の子の親と思われる人物は一緒に来たであろうママ友らしき人物とおしゃべりに夢中で子供を見ていない。
そのうち相手のママ友の子供も男の子につられて走り始め、ついには並んでいる客の間をぬってかくれんぼのようなことをし始めた。
その様子を見て怪訝そうに顔を歪め、親の顔を探す客もいる。
でも親は基本的におしゃべりに夢中で、子供のことをチラッと見ても注意したりしない。
理玖「ああいう親に育てられた子供はどんな風に育つんだろうな」
茉由「そうだね」
茉由が同調するとふたりのそばにやって来て隠れている男の子に理玖が声を掛けた。
理玖「きみ、なんて名前?」
男の子「そうすけ」
理玖の方は見ずとも素直に答えた男の子に理玖はしゃがんで話しかける。
理玖「そうすけ。かくれんぼは楽しいよな。でももしそうすけが怪我したらママが悲しむぞ」
男の子「怪我なんていつもしてるけど悲しまないよ」
理玖「そうか?でもきみが誰かを怪我させちゃったらママはきっと悲しむし怒るだろうな。怒られたくはないよな?」
男の子は少しの間のあと、コクっと頷いた。
理玖「じゃあママのそばに戻ろう。ほら、もう少しで中に入れるんだぞ!面白い乗り物がたーくさん待ってるぞ!」
理玖の明るい声色に男の子の目が列の前の方に向いた。
男の子「見えない」
理玖「それなら」
理玖は男の子の脇を抱えてヒョイと肩に乗せた。
理玖「これなら見えるだろ?」
男の子「うん!見えた!あとちょっとだ!ママに言ってくる!」
興奮気味の男の子は身動いだので、理玖は男の子を下ろしてあげた。
男の子は友達に声を掛けてから一緒に親の元へと走っていった。
そして親に声をかけるのだけど簡単にあしらわれてしまう。