不妊の未来
第六章
○検査室(夜)
就業時間を終え、白衣から私服に着替えた看護師長が、検査室に残っている茉由に声を掛けた。
看護師長「鷲尾さん。まだ帰らないの?」
茉由「ちょっと調べたいことがあって」
そう答えると師長は茉由の肩をポンと叩く。
師長「勉強熱心なのもいいけど、無理しないようにね」
茉由「…はい」
間があいてしまったのは勉強のために残るわけじゃないから。
でも言えば追求される。
それは避けたくて、短く答えるに留め、師長がいなくなるのを見届けてから尿コップを持ってトイレへと入った。
量はさほど必要ない。
検査室へと戻り、検査薬に必要量を滴下。
結果が出るまで10分。
たったの10分なのにもどかしい。
外来患者さんたちはいつもこんな気持ちで結果が出るのを待っているのだと思ったら、考えさせられる部分があった。
茉由「他社の試薬はどうだったかな」
少しでも結果が早く出せるように、少しでも短い時間で結果が出るメーカーはないか。
気を紛らわせる意味も含めてパソコンを開き、茉由は調べることにした。
ピピピピ
タイマー音が室内に響き渡る。
タイマーを止め、パソコンを閉じ、ドキドキしながら検査薬を覗き込む。
結果は陰性。