不妊の未来
大和「今日の患者分は終わっていますよね?それなのにどうしてこれを?」

大和は検査薬を使ったのが茉由だと断定した口振りだ。

茉由は黙っていると勘繰られてしまいそうで、話の矛先を少しずらすことにした。

茉由「院長の許可は取っています」

排卵検査薬を使用するに当たり、妊活を開始するという旨を院長には話した。
にも関わらず。

大和「そんなことは聞いていません」

ピシャリと言い切った。
有無を言わさぬ口調と真顔に気持ちが萎縮し、余計に口を閉ざしてしまう。

大和「あ、すみません」

茉由が唇を噛み締めたのが分かったのだろう。
大和が謝った。
そのおかげか、空気が多少和らいだ。

茉由「私こそすみません。片付けて早く帰ります」

でも大和は諦めてくれない。
踵を返し、ロッカーへと向かう茉由の腕を取り、足を止めさせた。

大和「質問の答えがまだですよ」

低い声が静かな室内に響く。
大和の方を振り返ると、固い表情をしていた。

大和「どうしてこれを使ったのですか?」

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