不妊の未来
個人的な理由だから答えたくないし、答えないのに、そこは察してくれない。
いや、ただ、茉由の口から聞きたいだけだ。

茉由「子供がほしいからです」

隠すことを諦め、正直に答えた。
すると大和の表情が歪んだ。
傷ついたかのようにも見える大和の変化に茉由は戸惑いを隠せない。

専門医なのだから排卵検査薬を使う理由なんてそれ以外にないことくらい分かっているはずなのに。

茉由「私が子供をほしいと考えるのはおかしなことでしょうか?」

茉由の言葉を受けて大和はハッとしたように目を見開き、首を横に振った。

大和「いや……」

言葉に詰まる大和。
対する茉由は不安そうな表情で大和を見つめる。


茉由「妊活するなら辞めた方がいいとか言わないですよね?」

大和「そんなこと言わないです。でも…すみません。ちょっと意外だったんです。鷲尾さんは勝手に子供を作らない主義だと思っていたから。このままずっと仕事を続けられるのかと」


そんなことはないと茉由は首を横に振る。
妊娠は早くから希望していて、結婚後から避妊をしなかったくらいだから。

大和「そうでしたか…あ、いや、立ち入ったことを聞いたりして申し訳なかったです」

茉由「いえ」

大和「じゃ、じゃあ…お疲れ様でした」


大和は会話を断ち切るかのように言うと茉由に背を向けて検査室から早々に出て行った。


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