不妊の未来
○診察室(昼)回想
大和「鷲尾さんって結婚されているんですか?!」
あまりの驚きように報告した医療秘書が笑った。
医療秘書「先生、その反応は鷲尾さんに対して失礼ですよ」
大和「それは…そうですね」
動揺しながらも平静を装う大和。
医療秘書「そうですよ。まさか先生は、鷲尾さんに限って結婚しないって思っていたんですか?まぁ、たしかに仕事一筋って感じはしますもんね。でも鷲尾さん美人じゃないですか。お相手は有名商社マンですよ。年収も破格だとか」
途中から話は大和の頭に入ってこなかった。
秘書が言っていたように、休日にも積極的に出勤していたから仕事一筋だとばかり思っていたのだ。
でも現実は違う。
後日、披露宴に出席したという秘書から『証拠です』というウェディングドレス姿の茉由を見させられて、大和の心には完全にぽっかりと穴が空いてしまった。
こんなにも好きだったのだと改めて感じされられもした。
大和(忘れなければ。もう叶わぬ恋だ)
普段以上に仕事に打ち込む大和。
でも簡単に忘れられるものではない。
スタッフ間で茉由の名が出るたび、耳を傾けてしまう。
同僚「鷲尾さん夫婦は子供を望まないタイプの夫婦みたいよ」
この噂を耳にした大和は胸を撫で下ろした。
仕事は続けてくれるから会えなくなるなんてことにはならないし、なんとなく茉由の夫婦生活を想像するのは嫌だったから。
だから茉由が子供を望まないと知り、大和は少しだけ気持ちを落ち着かせることができていた。
それに時間の経過とともに茉由への想いも薄れて行くだろうとも。
それなのに。