不妊の未来
理玖「茉由は仕事好きだろ?スキルアップだって昇級だって出来る。悪いことじゃないと思うんだ」

茉由「でも」

煮え切らない茉由に理玖の胸に不穏なものが渦巻く。
少しずつイライラしてきた。

理玖「茉由の周りには必死になっている人が多いから、その影響があるんだろうけどさ」

イラつきを抑えるように吐き捨てるように理玖は言った。

茉由は影響を受けているのだろうかと自問自答する。

その間に理玖はまた言葉を重ねていく。

理玖「茉由はもう少し視野を広げてみたらいいと思うよ。今はなんだか一つのことに囚われ過ぎているように見える。気分転換に…そうだ!今度温泉旅館にでも行こうか。どこに行きたい?茉由の好きなところに行こう」

明るく振る舞う理玖の気持ちが茉由に伝わらないわけではない。
でもここまで言われて、自分の気持ちを言わないのは夫婦として違うと思った茉由は顔をしっかりと上げ、理玖に気持ちを伝えることにした。

茉由「私が行きたいところは子宝の湯のある場所よ。理玖さんの気持ちはよく分かったけど私は子供がほしいの。今だって排卵日を予想する検査薬を使い始めてる」

理玖「なんでそんなこと」

理玖の顔が歪んだ。

理玖「ふたりの問題だろ?」

理玖のくぐもった声は怒りを抑え込んでいるように聞こえた。

茉由はそのことに関してはきちんと謝る。

茉由「勝手に始めたのは悪いと思ってる。ごめんなさい。でも検査受けてって言ったら受けてくれた?受けてはくれないでしょ?」

理玖「だからって」

一人で勝手に突っ走る茉由に、理玖は苛立ちを覚えた。

でも一呼吸置くことで冷静さを取り戻し、淡々とした口調で茉由を諭していく。

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