不妊の未来
理玖「そもそも検査受けてもし原因が分かったらどうするんだ?治療する?それで授かればいいよ。でも授かれなかったら?どこをゴールにする?莫大な治療費をかけてできませんでした、じゃ俺は納得いかない。そもそもどっちかに原因が見つかった場合、その原因と罪悪感を背負わないといけないんだ。俺か茉由が傷付くことになる。そんなの、耐えられないだろ。今だってこんな生活耐えられないのに」
理玖の正直な気持ちが最後の言葉に表れていた。
それを耳にして茉由の胸が痛む。
さらに理玖の意見は正論過ぎて、茉由はもうなにも言えなくなってしまった。
視線を落とすと、理玖は立ち上がり、茉由の肩にそっと触れ、顔を覗き込むようにして優しく言う。
理玖「俺は茉由とふたりだけの生活だって十分幸せだよ。茉由への気持ちはずっと変わらない」
茉由「じゃあせめて…」
茉由は顔を上げ、今まで言いたくても言えなかったことを口にする。
茉由「私に触れて。キスして。私を好きだって態度で示してよ」
理玖「それは…茉由も同じだろう?」
理玖は茉由が甘え下手なのことは知っている。
それでも自身が望むのなら同じことを相手にしてみてもいいだろうと思った。
理玖「俺は子作りのための道具じゃないんだ」
理玖の絞り出すような声を耳にして、これが理玖の本音だと茉由は悟り、しばらく黙り込む。
そして謝ることに決めた。
茉由「ごめんなさい」
たしかに理玖の言う通りだと思った茉由は謝った。
でも言い分はある。
茉由「私は理玖さんに子供を授けてあげたいって思ってて……でも不快な思いをさせていたんだね。本当にごめんなさい」
理玖「いいよ、謝らなくて。子供のこと、俺は茉由が思うほど望んでいないから」
それを聞いて茉由の表情が固くなった。
理玖は茉由を傷つけた。
でもこのタイミングを逃したら二度と言えない。
というより二度もこんな言い合いが起きるのは嫌だった。
だから理玖ははっきりと結論を口にする。