不妊の未来
理玖「俺はもう茉由を抱けないし抱かないよ」
理玖の言葉に茉由の胸はグサッと音がするほどに痛んだ。
でも聞かなければならない。
茉由「それは私のことが嫌いってこと?」
茉由は震える声で聞く。
理玖は首を横に振った。
理玖「茉由のことは変わらず好きだよ。愛してる。でも無理なんだ」
理玖は傷ついたであろう茉由を見たくなくて視線を下げた。
そんな理玖を見て茉由の心は一層傷つく。
でもそれなら、とひとつだけ方法が頭に浮かんだ。
茉由「私のこと抱いてくれなくていい。その代わり、精子だけちょうだい」
理玖「は?!」
茉由の言葉に理玖は驚き、視線を茉由に向ける。
でも真面目な性格の茉由が冗談なんて言うはずがない。
茉由は理玖を真っ直ぐに見つめてもう一度言う。
茉由「理玖さんが私を抱けないのは分かった。でも私は子供が欲しい。だから精子だけくれればあとはなんとかする」
理玖「それ本気で言ってんのか?」
茉由「本気よ。何度も言っているじゃない。私は子供が欲しいって」
茉由の声に迷いはない。
ただ視線は合わないし、目に光が宿っていない。
それが余計に心配になる理玖。
理玖「子供は諦めよう、俺は子供を望まないって言ったよな?」
茉由「でも私は欲しいの」
理玖「だからって…それで妊娠できて幸せか?そんなことないよな。少なくとも俺は茉由に『よかったな』とは言ってやれないぞ?」
茉由「じゃあ私はどうしたらいいの?夫に愛してもらえなくて、子供も授かれない。何のために夫婦でいるの?」
茉由はそこまで言ってある考えが脳裏をよぎった。
それを勢いで口にする。
茉由「離婚するしかないじゃない」