不妊の未来

○培養室続き

茉由は顕微鏡を覗き込みながら受精卵相手にまた話し掛ける。


茉由「このままだと離婚するしかないのかも」


実家に帰ってからも理玖から連絡は特にない。
茉由からも実家に帰ることしか連絡はしていない。

ケンカなど今まで一度もしてこなかったから元に戻る術をお互い知らないこともあるけど、このまますれ違いが続けば関係を修復することは難しくなる。

それが分かっていながらも自分の気持ちにケリを付けられない茉由。

両親には理玖の出張期間は一ヶ月だと伝えているからあと2週間のうちに結果を出さなければならないのだけど。


茉由「どうしたらいいんだろう。私、子供は諦めたくないんだよね」

受精卵相手に話す茉由の背後で培養室のドアが開いた音がした。

医療秘書「失礼します」

培養室に入ってきたのは医療秘書。

破棄と書かれた用紙を茉由に差し出す。


茉由「たしかに受け取りました」


凍結受精卵は凍結から2年程度を保存期限とし、その後は延長費用を支払う方のみ1年単位で保存を継続していく。

その中で妊娠を希望しない人、支払いを止める人、それぞれの事情に応じて破棄する。

茉由「いてて」

鈍い痛みのある下腹部。

最近生理痛がひどくなっていた。

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