不妊の未来
杏菜「そうだ、鷲尾さん。今週末の京都での学会って行きますか?」
茉由「あ、うん。行くよ。事前に休みも取ってる」
茉由は培養室に掛けられているカレンダーを指差すと、杏菜の名前も書かれていた。
茉由が杏菜の方を向くと、杏菜はニコッと微笑んだ。
杏菜「私も行くんです。一緒に行きましょう」
茉由「今回の面白そうだもんね」
茉由は内容を思い出し、杏菜に言うも、杏菜の目的は違った。
杏菜「その学会、大和先生も行くそうなんです。だから行きたいと思って」
茉由「あ…そうなんだ」
大和の名前を聞いて茉由の表情が硬くなった。
大和が行くことを茉由は知らなかったのだ。
プロポーズされたのはつい先日のこと。
それから茉由と大和は休みが互いにずれていたので、話すことも顔を合わすこともなく過ごしていた。
茉由の中で答えは出ていないけど、大和との結婚はさすがに考えられないときちんと話すべきだとは思っていた。
学会の時、少しでも時間をもらえないだろうか。
でも大和のことを好きな杏菜がいたら話しかけにくいし、話す機会も設けられない。
どうしたらいいものか、頭を悩ます茉由。
そんな茉由の様子を杏菜は見逃さない。
杏菜「大和先生となにかあったんですか?」
茉由「え?な、なにが?なにもないよ。なんで?」
明らかに動揺する茉由。
杏菜は茉由の様子がおかしいことに大和が関わっているのだとはっきり悟った。
杏菜「私に気を使って話さないのか、それとも……」
杏菜(大和先生に惹かれている?)
茉由「え?なに?」
杏菜の呟きに茉由が聞き返す。
でも杏菜は首を横に振り、なんでもないと仕事を進めた。