不妊の未来
茉由「前向きな姿勢羨ましいな〜」
茉由は杏菜の背中を見て呟く。
大和「誰のことですか?」
背後から声が聞こえて振り向くと大和が立っていた。
茉由「急に声をかけないでくださいよ。びっくりします」
大和「すみません」
茉由「それで…えっと益田先生は?」
茉由が辺りを見回すと大和はお手洗いの方を見た。
なるほどと茉由が頷くと大和は優しく微笑んだ。
大和「食事に行くのは初めてですね。先日は誘っても断られてしまいましたから四人だとしても嬉しいです」
茉由「あ、そ、そうですね」
大和のストレートな物言いに意識させられてドギマギする茉由。
その様子を満足そうに見下ろす大和は身を屈めて囁くように言う。
大和「二人きりがよかったですか?」
茉由「それは…全然」
はっきりと否定する茉由に大和は目を見開くも、すぐに破顔した。
大和「ハハ。そこは嘘でもいいから『二人きりになりたい』って言って欲しかったですね」
茉由が黙ると大和は目を細めて微笑む。
大和「僕は二人きりがよかったな」
茉由「そういうことはあまり」
周りを気にするように視線を彷徨わせる茉由。
大和「三崎さんの手前、言わないでほしいですか?」
杏菜の名前を出されて茉由はハッと顔を大和の方に向ける。
大和「彼女の気持ちは前から知っています。でも答えられないことも茉由は知ってるはずだ」
名前呼び捨てにされて、真っ直ぐ真剣な表情で見つめられて、茉由の胸の鼓動はドクンと大きく跳ねた。
見つめ合う。
ほんの数秒。
益田「悪い。遅くなって」
杏菜「すみませーん!お待たせして」