不妊の未来
大和のお酒が無くなるたびに注ぐ茉由。

茉由「まだ飲まれますか?」

日本酒が空いてしまったので聞くと、大和は立ち上がった。

大和「カウンターの方で飲み直しましょうか」

大和に誘われるまま、大和の隣に座る茉由。

大和「なにかつまみも頼みましょう。鷲尾さんは辛いものが苦手だから……」
 
茉由「え?」

メニュー表を見ていた大和は茉由の声に反応して視線を隣に向けた。

大和「食べたいものがあるのなら好きに頼んで構いませんよ?」

メニュー表を差し出されたので、茉由は首を横に振る。

茉由「そうじゃなくて…些細なことなんですけど」

前置いてから気になったことを口にする。

茉由「私が辛いものを苦手という話をしたことありましたっけ?」

プライベートな会話をした記憶がなかったので聞くと、大和はしまった、と言うように顔を顰めた。

茉由「なにか気に触るようなこと言いましたか?だとしたらすみません」

大和「いや、謝るのは僕の方です。鷲尾さんが辛いものを苦手だという話は食堂で話しているのを聞いて覚えていただけなので。盗み聞きとかすみません」

茉由「いえ。私、声が大きいから。もう少し静かに会話するように心がけます」

茉由が反省を込めて言うと大和は同意した。

大和「そうですね。鷲尾さんのことを気に掛けている男は鷲尾さんのことを知りたくて声に耳を傾けるから。知られたくなければボリュームを落とすか会話の内容に気をつけた方がいいかもしれません」

茉由「そんな男性」

いませんよ、と言おうとしたけど、大和の視線に気づいて言うのをやめた。

大和は肩肘をカウンターテーブルについて茉由を見つめている。

大和の視線が痛い。

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