不妊の未来
そこには京都のお店のカウンターで大和と茉由が並んで座っている様子が映し出されていた。
茉由「なに、これ?」
盗撮のような画像を見て茉由は怖くなり、スマートフォンをパッと手放した。
それを理玖がゆっくりと受け取る。
理玖「この先生のことを好きな人の存在を忘れたらダメだよ」
理玖に言われてハッと気づく茉由。
茉由「まさかあの時」
寝たふりをしていたのだ。
杏菜はお酒に弱いわけじゃなかった。
でもそもそもこの写真をどうやって理玖に送ったのか。
理玖と杏菜は接点がないのに。
混乱している茉由に理玖が言う。
理玖「ここまでする子だ。俺の職場を調べて訪ねて来たんだよ。『ちゃんと嫁を捕まえていてください』って。大きなお世話だよな」
理玖は顔を歪めて笑った。
引き攣った笑みに茉由はなにも言えない。
ただ裏切ったわけではないことは伝えないと。
茉由「私と大和先生の間には何もないわ」
理玖「信じられないな」
茉由「でもそれが真実よ」
理玖「嘘だ。コイツと再婚したいんだ。だから俺が茉由を抱けないって知りながら子供が欲しいって言って関係を悪くさせた。すべてその医者と結婚するために!」
茉由「違う!」
茉由は即座に否定した。
でもそれを上回る速さで理玖が言う。
理玖「離婚はしない。絶対に!」
理玖の感情の昂った声を受けて茉由は閉口した。
今はなにを言ってもダメかもしれないと茉由は冷静な頭で考える。
ただ考えれば考えるほど虚しかった。