不妊の未来
理玖「すまなかった」
理玖はそう言うなり、離婚届に手を伸ばし、サインと判子を押した。
茉由「荷物は週末にでも引っ越し業者の方と一緒に取りに来るから。両親や親戚にはお互いが報告しましょう」
茉由は離婚届を丁寧にカバンに入れながら理玖に伝えた。
理玖「理由は?」
理玖からの問いに茉由は肩をすくめて見せるだけで、答えを明らかにはしなかった。
お互いに自分の両親を納得させられるだけの理由を用意すればいいわけだから。
茉由「じゃあ」
玄関先まで見送りに来た理玖に茉由はゆっくりと頭を下げる。
茉由「短い間でしたがありがとうございました」
理玖「こちらこそ……ありがとう」
理玖も頭を下げると茉由はニコリと微笑み、玄関の扉を開けて出て行った。
その足で茉由が向かったのは初美の勤務先。
実は、茉由は京都から帰るなり、初美のクリニックのブライダルチェックをを受けていたのだ。
どの選択肢を選ぶにしてもまず自身が妊娠できる体なのか、知っておいた方がいいという初美のアドバイスを思い出したから。
ただその時の結果は思わしくなくて。