不妊の未来

○回想(院長室)

院長「卵巣の手術をしなければならないそうだ」

大和「え?」

理由が理由なだけに大和は驚きを隠せない。

大和「悪いものなんですか?」

院長に詰め寄るように聞く大和。
院長は焦った様子の大和を見て、少し戸惑いながらも首を横に振った。

院長「良性だそうだ。片側だけのようだし、今後妊娠することも可能だろう」

大和「そう…ですか」

力無く答えた大和の様子に院長は首を傾げる。

院長「なぜきみがそんなにショックを受けるんだ?」

大和「鷲尾さんは優秀でしたから」

大和は嘘ではない嘘で答えた。
でも院長は追求の手を止めない。

院長「優秀な人材は他にもいるだろう。きみがショックを受けているのは違う理由だな?」

まるで大和が茉由に好意を持っていることを確定した院長の口ぶりに大和が怪訝な顔を浮かべる。
すると院長はおもむろに一枚の写真を見せた。

そこに写っていたのは京都のお店で茉由と大和が親密そうにしている写真。

大和「なんですか、これは」

院長「匿名で送られてきたんだ。他のスタッフの目には触れていない。だが誰が送ってきたのか、想像はつくだろう?」

大和は写真を見ながら、これを撮影したのが杏菜で、現像して送って来たのが茉由の旦那だと予想した。

実際、その通りで、茉由と離婚することは同意しても、大和との再婚だけは許せなかった理玖が写真を現像し、院長あてに送ったのだった。

『不倫をバラされたくなければこの医師を辞めさせろ』と書いて。

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