不妊の未来
第十三章
○料亭(夜)
ゆっくり、誰にも気兼ねせず話せるようにと大和が指定したのは料亭。
女将と思われる着物の女性に個室へ通された茉由。
大和は先に来て座っていた。
慣れない高級料亭に落ち着かない茉由。
大和「どうぞ」
大和が向かいの席を掌を出して勧める。
茉由「失礼します」
ぎこちなく座る茉由を見て大和は微笑んだ。
大和「僕も初めて院長に連れて来られた時は緊張しました」
茉由(こんな高級なお店じゃなくてももよかったのに)
大和の好意だから言わないけれど茉由はキョロキョロと室内を見回し、そんな風に思う。
茉由の視線が落ち着いたのを見計らい、大和はお酒のメニュー表を渡す。
でも茉由は受け取らない。
茉由「今日はやめておきます」
大和「そうですか。では僕もそうしましょう」
メニュー表を下げる大和。
タイミングよく入ってきた店員にウーロン茶をふたつ頼み、食事を持ってきてもらえるよう伝えた。
茉由「あの」
大和「とりあえず食事を楽しみましょう。とても美味しいので気に入ってくれると思います」
話だけ済ませて帰るつもりでいた茉由は食事を味わう余裕などない。
困ってしまい視線を下げる茉由。
見兼ねた大和が話題を変えた。