妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
昭和初期の建築は、天井が低く、
うすぼんやりしている。

陰影礼賛のように、風情があると言えば、聞こえがいいが・・

床の間付きの10畳の和室と、
控えの間の8畳のふた間が
続きになっている。

部屋に入ると、
すぐに、久遠が障子を開けた。

「うわっ、眺めがいいな」

眼下には日本庭園、
その先に山並みが連なる。

「お茶を・・・」
天音は、においに気が付いた。

久遠からは、アジアのスパイスの匂いがする。
日本茶の匂いが、完全に負けている。

「やっぱ、畳・・いいなぁ」
久遠は、畳の上に大の字になった。

「俺は、日本人に近いんかなぁ。
ホッとする感じだ」

「あの、お茶をどうぞ」
天音は、急須からお茶を注いだ。

パスポートは外国だったが・・・
名前は・・タカハラ・・
日系の人なのか?

「お風呂はこちらの部屋のを、
お使いください。
大浴場も閉めているので」

よっと、掛け声をかけて、
久遠は起き上がると、お茶をすすった。

「俺って、猫舌なんだよね」
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