妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
天の音の話
ワゴンには鍋セット、
鶏は地鶏、ごはんは農家から玄米で買って、精米したてのもの。
野菜は、近所の農家のおばちゃんがくれた。
どれも、おいしいはずだ。
それと、吟醸酒だ。
酒蔵の逸品。
「タカハラ様、失礼いたします」
天音は声をかけたが、返事が
ない。
そっと、引き戸を開けると、
部屋には誰もいない。
風呂場で水音がする。
シャワーを、浴びているのだろう。
天音は机を拭き、カセットコンロを点火した。
ふと、横を見るとリュックの脇に、パスポートが、無造作に置いてある。
一応・・身元確認・・
今晩、泊まるのだし・・・
天音は、手早くパスポートを広げた。
クオン・タカハラ・リッジモンド
バースデイは・・
天音より、5個下だった。
パスポートは使い込まれ、
多くの出入国スタンプが、
乱雑に、所せましと押されている。