妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
天音は、手早くコンロの火力を
調節すると

「それでは、失礼いたします。
お食事が終わりましたら、
おさげいたしますので」
天音が、立ち上がろうとすると

久遠がすがるように、天音を見上げて

「一緒に食べようよ、
一人じゃ、寂しいよ」

はぁ・・・寂しいって・・
天音は、目が点になった。

「君の・・名前聞いてない?」

ああ、そうだ。
名前を、言っていなかったっけ。

「あの、三角(みすみ)・・
天音(あまね)と言います」

天音は一瞬、額にしわを寄せた。
小学校の頃、よく、
「さんかく」、「てんおん」と言われたからだ。

先に言っておいた方が、良いのだろう。

「三角は、トライアングルの漢字で三角、
天の音と書いて、あまねと言います」

天音は事務的に言うと、
取り皿に、鍋の肉や野菜を盛った。

久遠は、考え深げに
「天の音かぁ。
どんな音が、するのだろうね。
ダルシマーの音っぽいね」

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