妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
「ダルシマー・・?」
天音が聞き返すと、
久遠は冷酒を飲み干すと

「ああ、ケルト音楽にも、
よく使われる楽器でさ、
癒しの音って言われるんだ。
ユーチューブで・・」

そう言いながら、
スマホで、久遠は検索を始めた。
「ほら、これ・・聞いて?
すごくきれいだから」

オルゴールのように美しい、
確かに、天から降るような、
余韻が広がるような音色だった。

森の中のヒーリングミュージック。

「天音ちゃん、一緒に食べよう。
酒も飲めるよね」

五個年下の男に、「ちゃん」呼びされるのは、抵抗がある。

天音は躊躇したが、
ここはお客である、彼のリクエストなのだ。

この旅館を、少しでも高く売却するためには、むげな扱いはできない。

「ごしょうばんさせていただきます」
天音が言うと

「ゴショウバン?って・・・」
< 20 / 59 >

この作品をシェア

pagetop