妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
ヨーカイの話
久遠は、斜め45度方向に
座っている天音を見て
「親父がさぁ、ああ、
ラフカディオ・ハーンが好きで。
日本に初めて来た時、
雪女を見たって」
久遠は、クスクス笑った。
彼の酒は、気分を緩め、陽気になるのだろう。
「んで、雪が降る中、
たぶん、こんな所だったのだろうが、
仕事終わりの夕暮れで
ホテルの場所がわからなくて、
ふと、道の先に、
女の人が着物姿で、
すいすいと歩いていたんだって。
道を聞こうとした女の人ね・・・
その人、振り返ったら
雪女みたいに白くって、唇だけが真っ赤で・・・
美人だって。
親父は、恐怖で叫びながらも、
美人かどうかは、チェックしているんだよね。」
天音は、返事のしように困り、
相づちだけうった。
「はぁ」
久遠は、箸を止めて、
天音に酒をすすめるように
グラスを押し出した。