妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
久遠は、長い体を、
畳の上で「く」の字にして、眠っている。
浴衣が完全にはだけて、腹筋が見える。
シックスパックかぁ
筋トレが趣味なのか、いい体してるじゃん。
ついでに美形だし。
しかしながら・・・
まさか、あんな怖がりとは・・・
天音は何とか起き上がると、
のろのろと押入れから、
布団と枕を出した。
あいている場所に、布団を敷いた。
それから、
久遠に別の布団を、かけてやった。
こっちも相当に眠いし、
だるい。
「うーーーーーんと」
もし、こいつが目を覚まして、
部屋に誰もいなかったら
「こわぁーーーーいい」
とか叫んで、
旅館内を、走り回ったらどうするか。
こいつのガタイで、パニクられたら、押さえられないだろう。
天音は毛布をかぶり、
部屋の隅の柱に、寄りかかった。
食器の片づけは、
明日、早朝にやればいい。
三代目女将の仕事は、後回しで
いい。
天音の瞼は重く、閉じられた。