妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)

窓の外では、
大型のテントが、組みあがっている。
いつのまにか、
キャンピングカーも2台ほど
来ている。

皆、ビールを飲んで、
楽しそうにキャンプの準備をしている。

日本酒も、出したほうがいいのかな。
外の井戸で、冷やしておこうか・・・

天音が、一升瓶を抱え、
厨房の裏口から出て、井戸に向かった時だった。

少し先の茂みで、
男女が抱き合っている・・・
のが、視界に入った。

久遠と・・
あのモデルのように美しい、
大柄のブロンドの女の人。

そして、キスをしていた。
それも・・長い・・・
ディープキスだ。

天音は、一升瓶を抱えて、
後ずさりした。
音を立てないように注意して、
厨房に戻り、座り込んだ。

自分は・・
何を、期待していたのだろう・・

一人で舞い上がって・・
バカみたいだ。

久遠は、単なる客の一人だ。
それも、この旅館の最後の・・・

もみじの葉が、風で揺れる。

黒っぽい鯉は、
日陰の石の下で、隠れるように生きるのが、身の丈に合っている。
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