妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
早朝のお見送り
早朝は、鳥のさえずりが
木立の間に響く。
天音は4時に起きて、
おにぎりの弁当を作っておいた。
それから、5時20分に、
旅館の玄関を開けた。
門前に、スーツ姿の男性が二人、立っている。
一人は、大き目のビジネスバックを持っている。
近藤だろう。
「おはようございます」
天音は声をかけた。
久遠と近藤が、振り向いた。
スーツ姿の久遠は、違う世界の
住人のように見える。
王者の風格、
近藤は、側近のように控えていた。
「ああ、おはよう、朝早くて、
ごめんね」
久遠は、申し訳なさそうに、天音を見た。
レジ袋入りのおにぎりは、貧相で、この二人には合わない・・・
天音は、躊躇したが
「これを・・朝食です。
おにぎりですが、車内でお召し上がりください」
そう言って、
お茶のボトルも入っているレジ袋を二つ、従者である近藤に渡した。
黒の高級車が、坂道を上がってくる。