妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
遠ざかる旅館、
頭を下げ続ける天音の姿。
それを見て、久遠はため息をついた。
「誠実で、配慮の行き届いた方ですね」
そう言って、
近藤が、おにぎり入りのレジ袋を久遠に渡した。
「あのホテルの売却の件ですが・・」
近藤はビジネスバックから、
厚い書類の束を出して、説明を
始めた
「昔は地元の名士が集まる、
格式の高い旅館でした。
しかし、高速が延長して、
古い県道を使わなくなったので、
客が途絶えたようです。
それでも、日帰りの湯治客とか、
もみじの名所として、
なんとか経営をしていたようですが」
久遠は、近藤の説明を聞きながら、おにぎりにかぶりついた。
「うまいな・・
米がいいんだな」
「米もそうですが、水も有名です。
酒蔵も、このエリアには、
多くありますから」
近藤がうなずいて、答えた。