妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)

遠ざかる旅館、
頭を下げ続ける天音の姿。

それを見て、久遠はため息をついた。

「誠実で、配慮の行き届いた方ですね」
そう言って、
近藤が、おにぎり入りのレジ袋を久遠に渡した。

「あのホテルの売却の件ですが・・」

近藤はビジネスバックから、
厚い書類の束を出して、説明を
始めた

「昔は地元の名士が集まる、
格式の高い旅館でした。

しかし、高速が延長して、
古い県道を使わなくなったので、
客が途絶えたようです。

それでも、日帰りの湯治客とか、
もみじの名所として、
なんとか経営をしていたようですが」

久遠は、近藤の説明を聞きながら、おにぎりにかぶりついた。

「うまいな・・
米がいいんだな」

「米もそうですが、水も有名です。
酒蔵も、このエリアには、
多くありますから」

近藤がうなずいて、答えた。
< 47 / 59 >

この作品をシェア

pagetop