叶わぬ恋だと分かっていても
 まだ背後の扉が閉まり切っていないのに、ってドキドキする気持ちを掻き消すみたいに、なおちゃんが私に深く口付けてくる。

「あ、んっ、……な、おちゃ――」

 なおちゃんの腕にギュッとしがみつくようにして、私は懸命に自分の身体を支えながら彼のキスに応えて。


「ねぇお願い。部屋に入ったばっかで悪いけど……先に菜乃香(なのか)を補充させて?」

 唇を離すと同時、甘く切ない声音で耳元にそうささやかれた私は、小さくコクンと頷いた。


 仕事から帰宅してすぐ、シャワーを浴びて着替えたのは、私自身彼と再会したらすぐ、こういうことになるかも?って期待していたんだと思う。


 私となおちゃんは、どこまでも身体と身体で繋がった関係なのだと。
 下腹部に(くすぶ)りはじめた身を焦がすような熱に(おぼ)れながら、嫌と言うほど実感させられる。

 私は、彼を誘うように情欲に潤んだ瞳でなおちゃんを見上げた。


「ピアス、外さないとな」


 私の耳に髪の毛をかけながらなおちゃんが吐息を落として。

 今日はいつも利用するラブホテルや私の部屋ではないから、アクセサリーを保管するための小皿は準備されていない。
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