叶わぬ恋だと分かっていても
 情緒が不安定になり、今まではカラフルに伸び伸び描いていた絵が、太陽を隅っこの方に小さく小さく描くようになったり、色使いが黒一色になってしまったり、誰の目から見ても明らかに「変」になってしまったそうだ。

 幼稚園の先生からそんな指摘を受けた母が、子供らに絵の描き方を教えていた知人に姉の絵を見せて相談したら、「両親から、特に父親からの愛情に飢えてる子供がよくこんな絵を描くよ? 心当たりない?」と指摘されたんだとか。

 その話を受けて、父はすぐに車の営業を辞め、元々持っていた大型自動車の運転免許を活かす形で、義父(私からすると祖父)のやっていた会社に転職したらしい。

 父親は、私が生まれた時には既に大型トラックの運転手で、私はお父さんがそれ以外の仕事をしていたことがあると言われてもピンと来なかった。

 ただ、家にある車が何度買い替えても同じメーカーの車ばかりだったのは、父が勤めていた時の同僚から車を買っているためだと、子供心に聞かされたのを覚えている。
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