叶わぬ恋だと分かっていても
押し黙った電話口。お互いの吐息だけが通話口から聞こえてくる。
実際に対面で話していない分、相手の表情が見えないからやたらと音に敏感になってしまう。
どちらもが、相手の出方を待っているような、そんな息の詰まる数秒間。
それを先に破ったのは、もちろん私。
「あのね、なおちゃん。私……もうなおちゃんとの関係……お、……終、わりに、し……たい」
実家でお母さんの話を聞いて、そう伝えようと心に決めていた。
だけど実際なおちゃんに「さよなら」を告げようとしたら、何度も何度も言葉につっかえて、思ったようにスムーズに言えなかった。
なおちゃんは、私がたどたどしくも、懸命に彼との関係にピリオドを打とうとするセリフを、黙って聞いている――。
私、心の中でシミュレーションしていたの。
――嫌だ、菜乃香。別れたくない。
――そうだね、菜乃香。随分長いこと引っ張ってしまったけど、潮時だね。
なおちゃんは一体どちらの言葉を私にくれるんだろう?
実際に対面で話していない分、相手の表情が見えないからやたらと音に敏感になってしまう。
どちらもが、相手の出方を待っているような、そんな息の詰まる数秒間。
それを先に破ったのは、もちろん私。
「あのね、なおちゃん。私……もうなおちゃんとの関係……お、……終、わりに、し……たい」
実家でお母さんの話を聞いて、そう伝えようと心に決めていた。
だけど実際なおちゃんに「さよなら」を告げようとしたら、何度も何度も言葉につっかえて、思ったようにスムーズに言えなかった。
なおちゃんは、私がたどたどしくも、懸命に彼との関係にピリオドを打とうとするセリフを、黙って聞いている――。
私、心の中でシミュレーションしていたの。
――嫌だ、菜乃香。別れたくない。
――そうだね、菜乃香。随分長いこと引っ張ってしまったけど、潮時だね。
なおちゃんは一体どちらの言葉を私にくれるんだろう?