叶わぬ恋だと分かっていても
 さっきまではそれでもダメって言って、きっちりお別れするって決意していたはずなのに、「私の本心はどうなのか?」って問いかけられた途端、こんなにも揺らめいてしまう。

 私はどこまでもダメな女の子だ。


『……俺の気持ちは関係ないよ。最初に言った通り、俺は妻や子供を捨てることが出来ない身だから。決定権はいつも菜乃香(なのか)にあると思ってる』


 ズルイ、って思った。

 こんな時でも私。
 決めるのは私。
 何があっても菜乃香(なのか)が決めたことだから、(キミ)の自己責任だよってことだよね?


「なおちゃんは……私がいなくなっても平気、なの?」

 泣きそうになりながら聞いたら『そんなことは言ってないよ?』って返しながらも、どこか困ったように吐息を落とす気配がした。

 面倒臭い女だな、遊び相手としてはそろそろ捨て時だなって思われたのかな……。

 そんな風に思われて、微塵も惜しまれもせずフェードアウトは嫌だ。

 せめて、惜しい()を失くしたと思われながら、かっこよく「さよなら」したかった。

 なのに――。


「そんなことはないって言いながら……。それでもなおちゃんは結局『平気じゃない』とも言ってはくれないんだよね? ……なおちゃんはズルイよ。いつもいつも私にばかり責任を押し付けて! 自分の気持ちはちっとも明かしてくれないんだもん! なおちゃんなんか……大っ嫌い! バカ!」

 私は泣きながら一気にまくし立てて、なおちゃんからの返事を待たずに一方的に通話を切った。

 ついでにスマートフォンの電源を落として、ベッドに伏せて泣きじゃくる。

 こんな終わり方、したかったわけじゃないのに。

 ねぇ、なおちゃん。

 お願いだから……嘘でもいい。引き止める素振りを見せて?
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