叶わぬ恋だと分かっていても
 少しふわりとした印象の髪の毛は、天然パーマらしい。
 白いもののほぼないツーブロックのその髪の毛は、いつも綺麗に手入れがされていて寝癖がついているところなんて見たことがない。

 それすら大人の余裕に感じられて、何もかもに余裕のない私にはうらやましくさえ思えて。

 私、今日は肩よりほんの少し長めのゆるふわウェーブの髪の毛を、ハーフアップの要領で両サイドからゆるりと編み込んで、真ん中で合流させてバレッタ留めにしていた。
 けれどそれにしたって、実は寝癖を誤魔化すために他ならないの。
 跳ねたりしていなかったら、綺麗にブローしてどこも結んだりしないでこの場に臨んはずだ。


 4回も2人きりで出かけていると言うのに、私はまだ彼と何を話したらいいのかよく分からない。

 会話をしていても、彼の言葉はいつも私が思うよりワンテンポ遅れて返ってくるから余計に話しづらい。

 質問したのに答えてもらえない気持ちになって、どうしよう? 聞こえなかった?って思い始めた頃にポツリと返事がある感じ。
 そのテンポのズレが何だか落ち着かなくて……一緒にいても、いつもソワソワと居心地が悪かった。


 それは今日も一緒で――。


 何となく、その間が怖くて私からは言葉を発せられないでいる。
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