叶わぬ恋だと分かっていても
***


「甘いのがいい?」

 お酒は飲みつけていないよね?と言外に含められた私は、ここでやっと、「はい」と声に出して答えられた。


「じゃあ――」

 緒川(おがわ)さんのお勧めで、甘めの飲みやすいスパークリングワインを出されて。

 それまで飲んでいた炭酸水と交換される。

 琥珀色の液体が注がれたシャンパングラスに、小さな気泡がプツプツと上がる様がとてもお洒落で、一気に大人になった気がした私は、それだけで何だか浮き足立って。

 飲み慣れた甘い炭酸ジュースみたいな味にほだされて。
 白ワインをゆっくりとしたペースで飲む緒川さんを横目に、気がついたらハーフボトルをひとりで空けてしまっていた。

 頭がぼんやりしてきて「あ、まずい」って思った時にはすでに手遅れ。
 自力ではまっすぐ歩けなくなっていた。
< 15 / 242 >

この作品をシェア

pagetop