叶わぬ恋だと分かっていても
 会ってすぐに話したら、今日のデートが台無しになるかも知れないとか打算的なことを考えている私。
 こんな時まで、なおちゃんとの楽しい時間を享受したいとか考えてしまっているだなんて、嫌になるぐらい(ずる)い女だと自己嫌悪に(おちい)った。


 今日のなおちゃんは私と一緒に歩きながら、おもちゃコーナーをやたらと気にするの。

 今までこんなことはなかったから何事かしら?とキョトンとしたら、なおちゃんがまるで私のその視線を待っていたみたいに切り出した。

「実は知り合いの子供がね、ミニカにハマってるらしいんだけど……どうしても手に入れられない車があるらしくて。出掛けたら気にしてくれるよう頼まれてるんだ」

 そのまま携帯画面の画像フォルダから、可愛い猫の描かれたラッピングカーのミニ版――いわゆるミニチュア自動車玩具――の写真を見せてきて「これなんだけどね」と指さしてみせる。

 ミニカは子供たちに国産車のミニカーを届けたい、と言う思いから出来た、ミニーという会社のロングセラー商品だ。

 私には子供もいないし、自分自身そういうものに興味がなかったから詳しくは知らなかったけれど、存在ぐらいは認識している有名なおもちゃだと思う。
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