叶わぬ恋だと分かっていても
 なおちゃんの知り合いの子供が欲しがっているのは、そのミニカが時折出す限定品のトイカーらしい。

「悪いんだけど菜乃香(なのか)も一緒に探してくれるかな?」

 なおチャンにそうおねだりされたら、うなずくしかないじゃない。

 幸い目当てのミニカーは車体が可愛い猫の絵柄でラッピングされているのが印象的で。
 物があれば、私でもすぐに分かりそうだったから。


 なおちゃんとふたり。棚に並んだ沢山のミニカをあっちの端とこっちの端に別れて一つずつチェックしていって。

「なかったね」

 十分くらいかけてじっくり探したけれど、お目当てのミニカは見つけられなくて……何だかちょっぴり残念に思ってしまった。

 後にそのミニカーは、私にとってなおちゃんからのとんでもない裏切りの合図だったと知るのだけれど、それはもう少し後のお話。

 
***


 十四時くらいには向こうを引き上げて、十五時過ぎには地元へ帰ってきた私たちは、ある意味いつも通り。

 私が車を停めた駐車場に、なおちゃんの車も入れて。
 敷地内の片隅に停められた車内が、私たちの密会場所に早変わりした。
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