叶わぬ恋だと分かっていても
 結局「えっと……」と不自然に言いさしたまま黙り込んでしまった私に、電話口でお母さんが小さく吐息を落として。

 私はそれだけで、何もかも見透かされているみたいな気持ちになって、ソワソワと落ち着かなくなってしまう。


『――なのちゃん、今どこにいるのかはお母さんにも分からないけど……とりあえず病院に戻って来られないかな? お母さん、なのちゃんに会って話したいことがあるの』

 ややして母からそう提案された私は、「分かった」と言うことしか出来なかった。


***


「ごめんなさい、なおちゃん。私、病院に戻らなきゃいけなくなった……」

 通話を終えるなりなおちゃんに向き直ってそう言ったら、《《どこか不自然すぎるくらい自然な動作で》》スマートフォンを下に降ろしたなおちゃんが、「分かったよ」とやけにあっさり返してきた。

 私が彼に背中を向けて通話している間に、なおちゃんがコソコソと(?)携帯をいじっていたことに、私は妙な胸騒ぎを覚えてしまう。

(考えすぎ、だよね?)

 実際、手持無沙汰(てもちぶさた)な時にスマートフォンをいじるだなんて、よくある話だ。

 自分がなおちゃんの立場でもきっと、時間つぶしにスマホを見てしまっていたと思うし。

 でも――。
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