叶わぬ恋だと分かっていても
「退院後もリハビリには通わなきゃいけなかったからさ。院内で偶然会えたら面と向かってちゃんと謝ろうと思ってたんだ。けど……考えてみたら病院って物凄く広いもんね。会おうと思って自分からなのちゃんのお母さんの病棟へ出向かない限り、会えるわけなんてなかったんだ。結局のところ、僕はまだ迷っていたんだと思う。なかなか踏ん切りが付けられない間にこんなに時間が経ってしまってた。ホントなのちゃんからしたら、今更出て来るなよって感じだろうけど……。ごめん。……僕、やっぱりどうしてもなのちゃんが諦められなかった」
電話をすることも考えたけれど、電話で伝えるのは何か違う気がして出来なかったのだと、タツ兄が申し訳なさそうに瞳を揺らせた。
タツ兄の患部にはまだ金属製のプレートが埋め込まれたままで、それを除去するのは一年後くらいになるらしい。
私自身、お母さんの手術後は目まぐるしい日々で以前みたいに院内をウロウロすることもなくなっていたから……。
だから、偶然に頼って私に会いたかったタツ兄とは、何だかんだで今まで会えず仕舞いになっていたんだろう。
それを思うと『タツ兄の意気地なし!』と思わないこともない。
だけど――。
それだけ私のことを重く捉えてくれていたということなのかな?とも思えて。
そう思い至ったら、不思議と気持ちが凪いでいくのを感じずにはいられなかった。
電話をすることも考えたけれど、電話で伝えるのは何か違う気がして出来なかったのだと、タツ兄が申し訳なさそうに瞳を揺らせた。
タツ兄の患部にはまだ金属製のプレートが埋め込まれたままで、それを除去するのは一年後くらいになるらしい。
私自身、お母さんの手術後は目まぐるしい日々で以前みたいに院内をウロウロすることもなくなっていたから……。
だから、偶然に頼って私に会いたかったタツ兄とは、何だかんだで今まで会えず仕舞いになっていたんだろう。
それを思うと『タツ兄の意気地なし!』と思わないこともない。
だけど――。
それだけ私のことを重く捉えてくれていたということなのかな?とも思えて。
そう思い至ったら、不思議と気持ちが凪いでいくのを感じずにはいられなかった。